僕は自分が正しいなんて思ったことはない。きっと大多数の人は僕の考えを否定して、自分のことを正当化したがる。民主主義と言っても、少数意見はいつだって無価値なものだ。結果的に採用されるのは多数派の意見で、折衷なんて考えすら持たない。

 多数決は数の暴力だ。

 だから、他人の理解者になろうなんてことは考えてもできないことだ、という僕の考えはくしゃくしゃに丸められてゴミ箱にでも捨てられるんだ。そう考える人が少ないのだから、仕方のないことだ。僕にはどうしようもない。

 「ほんとに倉木くんはネガティブだなぁ。でも確かに、君や主人公の言う通りだと思うよ」

 困ったような、それでいてどこか悲しそうな、そんな表情で柚木はそう言った。どちらかと言えば後者に近いかもしれない。

 思わずたじろいでしまった。柚木がこういう類の話題で僕を肯定してくることなんてまったくなかった。今の話だってそうだ。彼女には明らかに僕の意見を否定する準備が整っていたはずだった。

 それなのに。

 「そんな面喰らった顔しなくてもいいじゃん。私だっていつも君を否定したくてしているわけではないんだから」