彼女の言っていることが分からないのは、僕に友達がいないからなのだろうか。彼女の話はときどき共感できないことがあるので困る。

 「あ、ごめん。友達いない倉木くんにはどっちの例えも分かんないか」

 「傷口に塩を塗るな。あるいはかさぶたを剥ぐな」

 彼女は容赦がない。特に僕に対しては。

 「まあ、主人公に共感できないこともなくはなかったんだけど、あまりに人生に絶望しすぎっていうか、性格暗すぎっていうか、私はあのセリフは嫌いだな」

 そして話題の転換が激しい。もう慣れたものだから何も言いはしないけど、たいていの人は怒りを覚える態度だと思う。こういうところは直したほうがいい。

 「それは柚木と主人公の境遇が違うからだ。似たような状況下にいれば、人間関係に諦めをつけたくなるものだよ。他人の真の理解者なんて存在しない」