恐いくらい真剣な目だった。

拾い集めた楽譜の中にリスト作曲『パガニーニによる超絶技巧練習曲』第3番変イ短調「ラ・カンパネッラ」と書いた楽譜があった。

奇跡のピアニストと呼ばれた女性ピアニストの演奏でも有名な、リストの難曲は祖母からヴァイオリン演奏で聴かされたことがある。

祖母はパガニーニがヴァイオリン用に作曲した曲をリストが、ピアノ練習曲「ラ・カンパネッラ」として編曲した曲で、イタリア語で「神の鐘の音」という意味だと教えてくれた。

「ラ・カンパネッラ、自由曲に?」

「ああ……第3番嬰ト短調ではなく、第3番変イ短調だ。今日はこの曲を弾くために来た」

すごい気力と気迫だと思った。

「『革命のエチュード』は捨て石に?」

「そんなことをすると思うか? 『革命』で審査員を惹きつけて『ラ・カンパネッラ』を弾く」