自分にあるとも思わないけれど、ないとも言えない。

あんなキラキラしたドレスを着て舞踏会をするようなものではないかもしれないが、人それぞれの物語の中で、きっと自分が王子様や王女様のそんな物語があるのかもしれない。










--- 8月。 -----




「夏音。今日、家寄ってもいいかな?まささんと話したくて。」





「いいけど、急に話って?」





「秘密。」




あれ以来、いや、あの後からはずっと前のままの神山奏。
あの日が何だったのかと思うほど、普通だった。









「お久しぶりです、まささん。」





「元気そうだな。」