高校でもことねは男から注目されていた。
どの男子も
ことねちゃんことねちゃんって
うるせーんだよ。
清楚ぶっちゃって。
いい子ぶっちゃって。
ことねが翔のことが好きなことなんかずっと気づいてた。
見てたらわかった。好きな人を見る目だって。
こいつが不幸になればいい。
傷つけばいい。
私は翔に近づいた。
私も保育園の時から顔つきは変わっている。
親も離婚して前の苗字は伊藤だったけど
今では斉藤になっているからわからないだろう。
顔も大人になるにつれて、可愛い方の顔つきにはなった。
私も一応いろんな男から告られたけど
あんな男どもに興味無い。
ことねが困ればいい。
それだけのために翔に近づいた。
好きとかの感情は全くない。
そのはずだった。
なのに
すごい優しくなって
身長も高くなって
今まで私が狙った男は必ず落ちたのに
翔は落ちない。
むかつく。
絶対ことねになんか渡さないんだから。
「はあ。」
キスをされてからというもの
翔とは気まずいままで
必要以上のことは話せずにいた。
まぁいつもそんな話さないから大して変わらないんだけども。
私は窓の近くをチラッと見る。
「…っ」
仲良さげに話す翔と彩香ちゃん。
ほんとにお似合いだ。
でも彩香ちゃんがいるのに
私にキスをしたのはなんで??
私ばかだから期待しちゃうよ??
もう諦めなきゃな。
桜井くんの言う通りだ。
彼女いる人を好きになったって意味無い。
適うわけないんだから。
大好きなキミへ。
言わなきゃいけないことがあります。
家に帰ると私は覚悟を決めた。
いつもは早く翔帰ってこないかな~って思うけど
今日はまだ帰ってこないでって思うの。
いつものように外から
「ばいばいっ」
彩香ちゃんの声がする。
もう慣れたや。
翔がリビングに入ってくる。
言わなきゃ。
私は服の裾をぎゅっと握りしめた。
「あ、あの」
「なに」
言いたくないでも言わなきゃ。
「もう一緒に住むのやめない?」
これが私ができる諦めるための方法でした。
「は?」
「い、いやだって翔には彩香ちゃんがいるのにほかの女の子と一緒に暮らしてるとか彩香ちゃんが知ったらかわいそうだし。それに私も料理の練習とかしたいし、1人で暮らせるからっ…」
顔をゆっくり上げるとすごく怖い顔をした翔が立っていた。
「むり」
「なっ」
むりとかこっちがむりだよ。
諦めたいの。
そうしたら学校でも全然話さないから
かかわらなくていいから
「ことねは1人無理でしょ」
「だ、大丈夫!」
「だめ」
「だめじゃないよ!」
「俺のこと嫌い?」
そ、そんな可愛い顔で言われても…。
ほんとは一緒にいたいよ。
でも翔には彩香ちゃんがいるから諦めたいの。
「嫌い、じゃないよ」
むしろすき。