キンコーン、カンコーン…
「はい、鉛筆置いて!じゃあ、後ろから集めてきて。」
テスト最終日の最後の科目である数学Bの試験が終了し、先生が声を上げる。
教室は、安堵とため息、そして喜びのまじった声で満たされる。
「はい、みんな今日までお疲れさん。今日はみんな開放感でいっぱいだろうが、
あんまり寄り道せずに帰れよ。」

試験最終日の放課後は、いつになく皆のテンションが高い。
今日は特に金曜日で、明日は休みの土曜なのでなおさらであった。
帰りの挨拶が終わった教室は、皆今日これからの遊びの
計画で盛り上がる。

(終わった…)
智子は、結局ほとんどの科目を一夜漬けで詰め込んだため、
テスト期間の3日間はほとんど寝ていなかった。
「とりあえず終わったね。って智子あんた死にかけね。」
前々から試験勉強を堅実にこなしていた綾子は、智子とは対照的に
テスト前日に徹夜などすることはなく、昨日はこれまでやったことの
見直しをして早々と寝たため、いたって元気である。
「今回は未曽有のハードスケジュールだったわ…。」
智子はクマのできた疲れ切った顔でそうつぶやいた。
「今日はどうする?トモもう死にかけだし、今日はおとなしく帰る?」
「何いってるの、今日遊ばないでいつ遊ぶのよ!カラオケよ、カラオケ行くわよ!!」
智子はそう断言すると鞄を肩にかけ、早くも教室の外へと歩き出した。
「ほいよ、じゃあ奈々も呼ぼっか。」
綾子は、奈々にメールを打ちながら智子の後を追いかけた。