「どうだった。」
次の日、学校に行くと綾子が笑顔で訪ねてきた。
「環境クラブ?」
質問の意味は当然分かっていたが、一応智子は聞いてみる。
「当然。」
「昨日は、皆で雑談した程度だったよ。」
「目的の彼は?」
綾子は、まだ学校に来ていない子の席である、智子の前の席に座った。
「来てなかったわ、でもよく考えたら彼部活やってるんだから来れなくて
当然だけど。」
智子は教室にいる他の生徒になるべく聞こえないように、少し声の
トーンを落として話した。
「そういえば、そうね。じゃあもしかして環境クラブに入っても
あんまり意味なかった?そもそも彼ホントに環境クラブに入ってた?」
綾子も、智子に合わせて、あまりまわりに聞こえないように
配慮して、声のトーンを下げる。
「一応入ってることは、入ってるみたい。月に一回月末会ってのがあって、それは休日の
活動だから、彼はその日だけ参加してるんじゃないかしら。」
「あ、そうか。たしかに私が見に行った日も休日だったから、彼もいたのかも。」
綾子の発言を聞いて智子は心の中でガッツポーズする。
「やっぱりそうなんだ、だから今のところ私今月の月末会に期待してるのよね。」

授業が始まっても、智子は月末会の事を考えていた。
彼がホントに来たらまず最初に何て声をかけようか。
第一印象は大事よね、どんな子がタイプなのかしら、
どんな話をすればイイ感じに、仲良くなればメアドを
交換して、友達になって、それから…
「この例題11は重要だから、今度の学期末試験にも似たような問題は必ず出すからな。」
数学の先生の言葉が、智子を現実に引き戻す。
(いかん、いかん!もうすぐ試験なんだから妄想に夢中になってる場合じゃない!)
智子は教科書の例題11を探して、マーカーでチェックした。
しかしながら、チェックするとついそれで安心してしまい、智子は
また妄想の世界へダイブするのであった。