小さい頃から星が好きだった。
だから夜は好きだ。
上を見れば満開の星が見える。


「お母さん、あたし、出かけてくる。」

「またあの公園?まぁいいけど10時までには帰ってくるのよ。あとスマホちゃんと持って行きなさいよ。」


「分かってるよ、じゃあ行ってきます。」


あたしの家から歩いて15分、坂の上の公園からは町全体と一面に広がる星空が見える。
そこから町と空を見るのが好きだった。


「あれ、誰かいる。」

誰がいるかは暗くてわからない。
だけど1つの影が木でできた冊の上で両手を広げて立っている。


ん?冊??冊の向こう側って?!


「あ、あの、ハーハーダメで、す!なにがあったか知らないけどハーハー諦めないで、下さい。
第1、あなたが死んだらもうここにこれなくなります!」


全速力で走ったので疲れた。
もともと運動は得意ではない。


冊の上に立ってた人は降りた。
説得できたらしい。


「あのさ、なに?俺が死ぬって」


「え?だ、だってあなた今飛び降りようとしてましたよね?」

「いや、してないけど。あー、あれ?やると気持ちいいんだよ。てゆーか俺が自殺するかと思って走ってきたの?
面白すぎるんだけど。」
 

くっくっくっと笑う誰かになんだかイラッとした。


「そんなに笑うことないじゃないですか。」


「あー、ごめん、ごめん」


その人はあたしのほうにくる。


「あんた、面白いな。俺、細熊鴇(ほそぐまとき)
あんた、名前は?」
 

公園の電灯がその人を明るく照らす。


「星永れの(ほしながれの)」


「星永れのね、もしよかったら俺と友達になんねー?」


これが鴇との出会いだった。