橘 隼人 side
美咲の後ろ姿を見送ったあと、部室に戻った
部室の隅にドガっとあぐらをかいて、頭を抱えた
どうしても、このまま帰る気になれなくて、
ただひとりで、何も考えずに居たいと思った
美咲のことは、大事な幼馴染で、大事なマネージャーだと思ってる
家も向かい同士で、親同士も仲がよくて、何をするのもずっと一緒だった
小さい頃は気が弱くて、いじめられっ子だった俺は
いつもいつも美咲に助けられた
「あんたたち!よわいものいじめはダメって、せんせいからいわれたでしょ!」
俺とは正反対で気が強い美咲は、いじめっ子たちから恐れられていて、美咲が来ると、いじめっ子たちは一目散に帰っていく
追い払ったあとはいつも俺に説教をする
「あんたね!おとこなんだから、しっかりしなさいよ!みさきにまもられてるなんて、はずかしいわよ!」
確かに、恥ずかしいと思った
強くなりたいってこの時初めて思った
それから、強くなるためにって始めた野球。
もともと父親がタイガーズファンで野球はよく見ていた
父親が
「野球をしてる人達はみんなかっこよくて、強いんだぞ」
そう言っていたことを思い出した
じゃあ野球をすれば強くなれるんだ!って、そんな簡単で単純な理由で始めたのが野球だった
やるからにはしっかりやり遂げようと思っていたから
毎日練習して、自主練も欠かさない
いつの間にか、自分にとって欠かせない、野球は大きな存在になった
そんな俺に影響を受けたのか、
美咲は、高校でマネージャーになった
小さい頃と変わらない、そのまま俺たちは大人になっていくんだと、信じて疑わなかった