誰にも相談できない。誰かに知られるわけにはいかないけれど。

 わたしは秘密の大きさを持て余していた。

 だから。回答、ないしは出題。誰かに、あてて。

 チョークの先を黒板に走らせる。――隅の方に。


 いちご 
 はこべ
 藤
 さいかち
 むくげ



 [問題] これらの植物を組み合わせることで、どんなことが可能になるか答えよ。


 試しに頭の中で出題文を思い浮かべると、ひやり、としたものが背中を走っていった。

 わたしは慌てて、黒板消しを手に取る。

 一度文字の上を往復させただけでは、完全にはきれいにならなかった。

 掃除の後、なにか文字が書かれた証拠が、白い汚れになって残ってしまう。目をこらせば、文字も読めるかもしれない。

 後ろめたい気分で何度も黒板消しを走らせ、ようやく、わからなくなるくらい汚れが薄くなってから、わたしは教室を出て、粉のついた手を洗った。


 なにをやっているんだか。