2年1組の教室は無人だった。みんな、部活に行ったか、帰ったのだろう。

 ぴしゃん、とスライド式の扉を閉めると、外の音が途切れて、なんだか広い学校に自分ひとり、取り残されたような気持ちになった。

 錯覚なんだけどさ。

 なんだか、ひねくれたいたずら心が、浮かんできてしまう。

 誰もいないし。誰がやったのか、わかりはしない。そんな気持ちが拍車をかけて。

 掃除の後だから、黒板もしっかりぞうきんで拭かれて、ぴかぴかだ。

 わたしはチョーク入れを引き出すと、中から白いチョークを一本摘まみあげた。

 指先がカラフルな粉で汚れて、少しむずむずする。 



 ――この広い世界で、わたしだけが知っている、秘密がある。