「親子だったら譲るってものあると思うんだけど、そこんとこジビアだよねぇ~」

とアリ

「で、がっくんがオーナーになっても姫花はここに来てないんだ?」

と賢次は言うなり、考え込んだ様子だったが、グイッとグラスを空け、席を立った

「もう行くの?」

とアリはニヤッと笑った

「よく言うよ」

と賢次はそんなアリにニヤッと笑って見せた

そして、賢次はAQUAを後にして、タクシーに乗り込んだのだった

賢次がタクシーで向かったのは、姫花の自宅だった

外套はついているものの、陽が落ちると自然とつくようにセットしてあるものなので、在宅中なのかはわからない

ただ、セキュリィーが厳しいので賢次でも下手に入ろうとすると警備会社がスッ飛んでくるので、数回インターホンを鳴らしその場で待ってみた

いくら待ってもなんの応答も聞こえないので、賢次は携帯のメモリーからガクの名前を呼び出した

♪♪♪

いくら呼び出してもでないので、そのままりんにコールする

「はい? 賢次!? どうしたの?」

開口一番元気なりんの声が賢次の耳に届く

「がっくん、そこにいる? いくら掛けてもでねぇんだよ・・」

賢次はため息とともに尋ねた

「ガクは今日は一日仕事だよ? どうした?」

伝言があるなら聞くよというりん

「いや・・ あのさ、がっくんって家に帰ってるよな?」

なんとなく言いにくい賢次

「え? なんで?」

そんな事を聞かれると思っていなかったりんの声は上ずった

「いや、なんとなく?」

「ん~ ここだけの話ね、ここ2ヶ月くらいわたしんとこに入り浸り・・」

りんは恥ずかしそうに話している様子が電話越しにも伺える