思えば、この時からだった…




「佑紀〜母さん、出張しなきゃいけなくなったの。」




「あぁそうなの?行き先どこ?」




「パリよ!凄いでしょー!大手企業との取り引き任されちゃったのー!」




私の父さんが死んで10年。



母は、バリバリのキャリアウーマンになっていた。



仕事をする母は格好良くて、私の憧れでもあった。



だから…




「でもね、1か月の間、家を空けなきゃならないの。佑紀は家事できるから大丈夫でしょう?だけどね、母さんの仕事のパートナーのお子さんが家事できないらしくて」





「だから佑紀〜!佐藤さん家の子と1か月同居してくれない!?」


だから…




「いいよ。別に。」




この時に、危機感なんて微塵もなくオッケーしちゃったんだ…




「佑紀ありがとう〜!じゃ、一週間後に母さん行くから、荷物まとめといてね!…あ!打ち合わせ!じゃ戸締りよろしく!」