トントントン
「失礼します。1年3組の遊佐です」
保健室にはいる時の定型文を言いながら入るが、返答がない。
「すみませーん。」
他に誰も居ないようだ。
生徒の入室記録を自分で残しておく机の方に向かうと、先生は外出中との伝言板がある。
私はとりあえず体温を計ろうと体温計を手にする。
自分の感覚だと、熱は無いように感じるが保健室に来たらみんな計ることが決められている。
ピピピピ
計り終えた体温計を見ると、36.7と表示されていた。
熱は無いみたい。
ベッドを借りるのは大袈裟だと思い、ソファでとりあえず休む事に。
(それにしてもどうしよう。美香ちゃんや芹沢くんとどんな顔して会えば良いんだろう…)
(お風呂の時に芹沢くんに起こった手前、相川君に下手に相談できないし。それに聞いたとしても相川君は知らないと思うし…)
いくら考えても同じことがループするだけで何も解決策は思いつかない。
記憶を消す、何て事はしたく無い。
「はぁ………」
「どうしたの?」
「え!?あ、相川くん…」
「さっき教室の廊下でフラフラしながら歩いてる遊佐さん見たから心配で様子見に来たんだけど…」
「そうだったんだ。ありがとう、熱も無いし大丈夫だよ。」
「そっか、頭痛?風邪でも引いた?」
「ただの頭痛だと思う。休んでたら治ると思うよ!」
「無理しないでね、遊佐さん頭痛持ちなの⁇」
「そんなことないよ。むしろ健康体過ぎて頭痛すらも久しぶりなくらい。」
「そっか…。ほんとちゃんと休んでね。何かあったら連絡してくれていいから。」
「ありがとう、みんな優しいなぁ」
「みんな?」
「うん、みんなって訳じゃないけどさっき美香ちゃんにも同じこと言われたの。"何かあったら連絡して"って。いい友達持ったなぁ」
「みんな思ってることは同じなんだね。話しすぎて疲れさせちゃ悪いからもう行くね。少し寝てな。」
「ありがとう。」
そう言って相川くんは保健室を出た。
ほんといい友達を持った。
それなのに私は….
そう考えてるうちに眠りについてしまった。