相川七瀬の祝日。





今日は祝日だ。




その今日、俺には大事な用事がある。




お墓参り。




過去に不慮の事故で兄を亡くした。




その時俺はまだ小さかったから、一緒に遊んだ記憶が少ないが、優しい兄の姿は今でもハッキリと覚えている。




両親は親族に用事があったため1人で来た。



軽く水で流してお墓を綺麗にしておくように言われている。




お盆でもないお墓にな人はほとんどいなくて不気味なほどに静かだった。





掃除が終わった後、俺はお墓に向かって手をあわせる。




「にいちゃん、俺、どうして良いかわかんねぇよ。」





お墓に向かって1人で話し出す。




「俺の好きな人は海斗の事が好きで、海斗は他の人が好きで…。でも、海斗の好きな人は勘違いしてるみたいだし…もう俺の立場わかんねぇな。」








???「そんなことないよ。」








「え、誰かいるのか…⁇」





???「七瀬、久しぶり。」








「え、にいちゃん…⁇にいちゃん、何で…⁉︎」






「とある事情でこっちの世界に来れているんだ。七瀬が掃除してくれたお陰かな。」





「どーゆー事だよ。こっちの世界って?」





「俺は死んだ後、冥界で生まれ変わったんだよ。」





「冥界…?」





「そ。冥界っていうのは死者が暮らしている所なんだけどね。そこで運良くなかなかの地位につけたんだ。」





「冥界…死者の世界…。そうか、生き返るわけねぇもんな…。」




「うん、ごめんね。ずっと七瀬が困ってるの知ってたから今日は話があって無理に出てきたんだ。長くは居られないからよく聞いて。」






「うん。わかった。」







俺はそこでコマンドというものの存在について聞かされた。



それを使えばある能力を自由に使う事が出来るらしい。



兄が持っているのは〈predict〉と〈heal〉。




それを海斗にあげようと考えている事。




でもその事を七瀬が知っているという事は他言無用。




陰からサポートして欲しい、という事だった。




「俺は今度、何も知らないふりをして海斗のところに行く。このコマンドを与えるためなら契約の一環としてこっちに来れるんだ。」





「そうか…。」




「申し訳ないけどコマンドはな、……使う分だけその人の体に負担がかかる。」





「…っ!なら!俺が!海斗じゃなくて俺がやるよ!」




「ダメだ!実の弟にそんな事させられるか!……それを弟のように可愛がっていた海斗に渡すのも辛いが…………やっぱり七瀬が1番大事なんだよ………!!」




「にいちゃん…。………わかった。俺が死ぬ気でサポートしてやる…。だから俺……、俺頑張るから、またここで会ってくれ…!」






「うん。約束だ。海斗の事は任せたぞ。後、今から言う事が1番重要だ。」





「何…?」








「そのコマンド、遊佐さんも使っている。しかも2つだ。」






「……………⁉︎え⁉︎」






「しかも、遊佐さんの、契約相手は本物の悪魔だ。冥界とは違って魔界の奴と契約してしまった…」






「え、それってもしかしてかなりやばい?」





「うん。しかもタチ悪いことに遊佐さんは本物の悪魔だという事を知らない。その上体に負担がかかる事さえ聞かされていない。」






「なんだと………!」






「俺はその遊佐さんって人と面識はないけど、きっと海斗の好きなひとだろ⁇」




「うん。」






「このままだと遊佐さんが危ない。体の負担については詳細はわかっていない。何が起こるかも予想できない。だからそっちも見てやって欲しい。」





「わかった。」





「すべてをお前に話して任せてしまって、お前が1番辛い立場になってしまったかもな。こんな風でしか手伝えないにいちゃんだけど……頼んだぞ……」




「にいちゃん!待ってよにいちゃん!」





そう言って兄は消えてしまった。




気がつくと辺りは夕暮れ。





そろそろ家に帰らないと親が心配する。





帰ろう。





帰って頭の中を一旦整理しよう。





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