私、楓は一足先に部屋に戻っていた。あれから相川くんとは重要なやりとりはなく、他愛のない話で盛り上がった。



私は美香ちゃんが戻ってくるまで暇で、時間を持て余していた。



そういえば、あの黒い紙は家に置いてきている。


何かあって誰かに見られたらマズイ。


自分でもあの紙の貴重さは流石にわかっている。




しかし、オリエンテーションの前に準備していた待ち合わせのイベントは終わってしまった。



恋愛経験もなく、ましてや今まで友達もいなかった自分に、上手く協力してあげる方法なんてこれくらいしかわからない。



(何かないかなぁ。すぐ相川くんに聞くのもなんか申し訳ないし。)





・・・・


しばらく1人で考え込んでいた。

すると



ガチャッ



「ただいまー!」



美香ちゃんが戻ってきた。



「おかえり。芹沢くんとは話せた?」




「うん!お陰様で♪でもビックリしたよ〜、いきなり相川くんとどっかいっちゃうんだから。」



「ごめんね。あれしか出来なくて」



「いやいや私はめちゃ嬉しかった!それに前よりも近づけた気がするし!」




「良かったぁ。自分でもバレバレかなって不安だったよ。」



「芹沢くんは特になんも言ってなかったし大丈夫」




「そか!これからもファイトだね!」




「うん!」




それから夕食を終え、お風呂の時間。
決まった時間内ならいつでも入って良いので、私たちは早めに入ることにした。




個室にお風呂はなく、浴場があるので荷物を持って部屋を出る。



まだ入浴時間が始まったばかりとだけあり、ほとんどの生徒は部屋の中で騒いだりしている。


すこし廊下に声が漏れているため、ほとんどが部屋に入ることがわかる。




浴場に着き、人も少ないことだし自分のペースでゆっくり入ることにした。



女湯と書かれたのれんのすぐ側にあるベンチで待ち合わせ。



私は熱い湯船が苦手で長い時間浸かることができないのに対して、美香ちゃんは長風呂が好きなようだ。



そんなこともあって座って休めるベンチの待ち合わせになったのだ。




私はすぐにお風呂を済ませて髪を乾かし、外で待っていた。



美香ちゃんはもう少しかかるだろうと、飲み物でも飲みながら待つことにする。





(ぷはぁ〜。やっぱ、お風呂の後にこうして、ゆっくりできるのは最高だなぁ)




私はボーッとしながら待っていると男湯の方から誰か出てくるのが見えた。




芹沢くんだった。




見た感じお風呂の後って感じ。



芹沢くんは私に気付き、こちらに向かってくる。



「よお、あのさ1つ聞きたいことがあるんだけど…いいか?」



「あ、うん。なに⁇」



「楠木ってもしかして俺のこと好きなの?」




(えぇぇぇぇ⁉︎)


(こーゆー事って普通聞く⁉︎)




私は内心驚きながらも答えた。




「知らないけどなんで?」



「楠木が、お前と仲いいって言ってたからそーゆー話もしてんのかなっておもっただけ。」



「仲は良いけどそーゆー事って簡単に言えることじゃないでしょ。なら芹沢くんも自分に好きな人ができたらすぐ相川くんに言うの?」




「………言わねぇな。」




「でしょ。そういう事だから。」




「……………」



無言で芹沢くんは去っていった。





私はすこしキツく言い過ぎただろうか。


やってしまった、と思い最後は顔を見れなかった。


でもあんな聞き方ありえないと思ってつい言ってしまった。


いや、別に私の評価が下がるのは問題ない。



とりあえずこれは相川くんに相談していいかな…



私は事の流れを相川くんにメールした。



そんな事をしているうちに美香ちゃんがやってくる。



「ごめーん!ちょっと時間かかっちゃった。」



「大丈夫!私ボーッとしてる時間すきだし。じゃぁ部屋戻ろっか!」





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