「今日もいいことなかったなぁ。」


私、遊佐 楓(ユサ カエデ)は学校の下校中、俯いて歩いている。


新高1の私は不幸体質のようで、昔から何かと悪い事が続く。


ガムを踏んでしまい靴の裏にくっついてしまったり、ひどい時は関係のない喧嘩に巻き込まれることもあった。


そんな私は今では誰かと関わることも怖くなり、1人でいる事が多い。


(いっそのこと消えてしまいたい。)


そんなことを考えながら家に着く。


「ただいまー!」


せめてもの抵抗と言わんばかりに大声を出すが、もちろん返事はない。

両親共働きで2人とも帰ってくるのは遅いのが当たり前だから。



机にはいつものメモ。


『おかえり。これ夜ご飯。温めてから食べてね。』


お母さんのメモがあるだけで私は少し安心する。
私の帰りを迎えてくれている気がするから。



先に着替えようと自室に向かう。



いつもと変わらぬ風景………のはずが



「あれ?こんな紙置いてたっけ?お母さんが置いたのかなぁ?」


そこには1枚の黒い紙と白いチョークの様なものがある。



私はそれを手に取ってまじまじと見つめた。
その黒さは何かと闇へと私を連れ去ってしまいそうな深い黒だ。


けれどどこか美しい色で。



私が机に置こうとした時、その紙に何か文字が浮かび上がった。