そのあとの先生の話なんて右から入って左から抜けていった。

―「梓ぁ、また会長見てたっしょ?」

「なぜそれをっ?!」

「・・・ニヤニヤしてる梓見てればわかるから。」

彩美が当たり前のように言う。

「私も生徒会、入れば良かったぁ~」

唇をとがらせ机に顔をふせた。

「知ってる?生徒会って偏差値65以上じゃないとはいれないんだって。」

「・・・。」

目の前に広がった机が絶望の色にかわった。

偏差値50の私には遠い話だった。

「しかも、会長は学校1位の人が強制的になるんだって」

しらなかった・・・。

この学校に3年間もいたのにちっともしらなかった。

会長がNO.Oneだったなんて・・・。

私にあなたは・・・遠すぎる。

「海斗~!」

他クラスの人がうちの教室にやってきたみたいだ。

「あっ!ほら、颯人くんだよ!!」

彩美が私の頭をひじで突っつく。

颯人くん・・・―。

その言葉を聞いた瞬間に顔を上げた。

颯人くんは私の隣にきた。

―ドキッ!

颯人くんこと水谷 颯人は生徒会長兼私の好きな人。

隣の席の海斗くんとは仲がいいので、ちょくちょくうちのクラスに遊びにくる。

海斗くんの隣にしゃがんで、お話する。

「あの、よかったら私のイス使って下さい。」

今日も勇気を出して、声を出した。

「いつも、ありがとう。吉田さん。」

めがねの奥の目を細めながら頬を緩ませた。

―“吉田さん”って・・・きゃ~っ!

名前、覚えてもらっちゃたっ♪

初めて私の名前が愛しく思えた。

笑うと消えちゃう瞳。

難しい単語を並べる口からは、真っ白な犬歯が見える。

黒ぶちのスタイリッシュなめがねに似合わず、無造作にまとめられた茶色い髪。

校則を破らない程度に着こなした制服。

頭は、いいけど決して優等生らしくない彼のギャップにさらに惹かれた。