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あれから、約1時間。



私は2階の、とてももったいなさすぎるくらい広い部屋に暮らすことになり、ついさっき荷物解きが終わったところだ。



黒瀬が荷物解きを手伝ってくれたんだけど、バッグに入っていた私の下着を見られてしまい、大惨事となった。



「はぁ………疲れた……。」



「あー疲れた疲れたー。(棒)」



「ふざけんな!私の下着見たくせにっ!」



「わざとじゃねーって。」


そう言いながらもにやける黒瀬、マジでシバく。



私は、黒瀬にバレないように拳を硬く握りしめ、しずかに目で黒瀬のみぞおちを捉えた。


………来た。



ロック・オン。



「……っんの、ド変態!」



私がぐっと握りしめた拳を思いっきり黒瀬のみぞおちに入れようとしたその瞬間。





――――ぐいっ。





いきなり黒瀬にその手を掴まれ、いっきに引き寄せられる。



「………え??」





…………そして。




「………きゃっ!」




ぐらっ、と視界が揺らめき、私の体は床に押し付けられる形になった。




「…………えっ……」



すぐ目の前には黒瀬のムカつくくらいに整った顔。



………つまり、押し倒されてる!?





ぶわっと顔が熱くなる。




「やっ……離してっ…………!」



必死に抵抗する。




けど、私の両手首を黒瀬の大きくて男らしい手が拘束しているせいで、ちっとも効いていない。




「……離してよっ。」

 
「嫌だ。」


即答される。





だって……恥ずかしいんだもんっ…………。




私の心臓は、これ以上ないくらいに暴れていて。



胸の奥底がじわりと熱くなって、苦しい。




黒瀬の熱っぽい瞳に見つめられるだけで、私の心の中はきゅうっと締め付けられる感覚に陥るんだ。



なんでなの…………こんなの初めてだよ………。






「お前が、俺を男だって認識してないからだ………。だから、俺が男だってこと教えてやる……。」




「男だって知ってるし!私はそんなに馬鹿じゃないからっ!」




「っるせーよ。お前の“男”は、性別が男ってだけだろ。そんなんじゃねーんだよ。」