「……えっ、お父さんとお母さんアメリカに行くの!?」
「………あーあ。バレちゃったじゃない。」
「ったく、亜莉珠(ありす)は口が軽いな。」
「えへへ〜」
……………え、冗談じゃなくてほんとに!?
嘘でしょ!?
「……………もう、亜莉珠が言っちゃったからしょうがないわね。実はね、お父さん、アメリカに転勤になったの。」
「え………嘘………」
「いや、ほんとなんだ。」
お父さんがさっきの声音とは正反対の、低い声でそうぼやいた。
私はごくりと唾を飲む。
「それでね、春歌はいっつも私達がひとりにさせちゃってるけど、さすがにアメリカにまで行っちゃったら何かあったとき大変でしょう?本当は私が残ればいいんだけど、お父さんが一人だと、家事もなーんにも出来ないからね。」
ははは、とお父さんが笑う。
いや、今そんなほのぼの空気要らないって!
「だから、しばらく。そうね……………春歌が受験生になる頃には帰ってこれるかしら。もしかしたら、受験ぎりぎりくらいになるかもしれないわね。」
「え!?そんなに!?」
最低2年!?
その間どうすんの!
「ほんとにごめん。春歌はどうしてもついていけないからね………。だからね、ここからが本当の本題。あのね、春歌がひとりぼっちになっちゃう約2年間、ここじゃなくて別の人の家で預かって貰うことになったの。」
「え!?えぇ!?」
ホームステイ的な!?
「そこの家には、春歌と同級生で、同じ鮎沢高校に通う子が居るの。だから、学校で何かあっても大丈夫でしょ?」
いや、そこってあんまり大丈夫じゃないような…………。
「しかも、そのお家、超豪邸よ!」
「そうだぞ!うちとは全く比べ物にもならないくらい!」
お父さんも少し興奮気味に話す。
お姉ちゃんは、終始目をキラキラさせてる。
「もう、優里んち最高なんだから!メイドさん居るし、部屋もたっくさん!」
わぁ、それはすごい。
ってか、お姉ちゃんその家知ってるんだね。
私と同級生なのに、お姉ちゃんが、その人のこと知ってるとか何か意外。
ていうか、どこで知り合うんかい!
まぁ、それは置いといて。
それにしても、ホームステイか……。
なんかちょっとだけワクワクするな。
でも、私は結構人見知りだから、仲良くなれるかは分からないんだけど。
早くその“優里”っていう子に会いたいなぁ。
「それで、いつ行くの?」
「今日よ。」
「はぁっ!?」
私は思わず立ち上がった。
お姉ちゃんは爆笑。
な、なんで早く言ってくれなかったの〜。
確かにさっき、怪しい荷物が置いてあったもんな…………
「だって、今日から出発しないと、アメリカに間に合わないんだもん。そのためにお休み貰ったのよ。」
お母さんは自慢気に笑う。
じゃあ、今日からホームステイ先に行くんだ。
急いで準備しないと!