此処、大阪ミナミで月の雫は由緒正しきホスト倶楽部であ倶楽部る。

夜の街に舞う美しき蝶達の中の一人に過ぎないキャバ嬢の凛蝶(あげは)は仕事の鬱憤ばらしにと足を運び遊びのつもりがドップリはまってしまった。

そして今日も仕事帰りに寄り、'カラン'とドアを開けるといつもボーイの蓮誓(れんせい)が声かけてくれるのだ。

『いつもありがとうございます凛蝶さん!
京陽(みやび)さんですよね?
今日も京陽さん同伴だったので…』

と、京陽に他のお客がついてるのは毎度の事で、

『じゃ、あんたでいい』

と、近くにいた梗(きょう)の手をひいて席に案内させたのだった。

永久指名制の為、今迄は誰も指名しなかったのだが、その日は凛蝶と同じキャバ嬢の鈴愛(りな)が京陽と同伴してきたのを見て、嫉妬心から凛蝶は寂しさをまぎらわせる為に梗を指名してしまったのだった。

それから京陽にお客がついてる時は梗にうさばらしをするようになってた…というより、梗を指名した為、人気ナンバーワンの京陽はチープな凛蝶では指名できず、席には来る事はない。