1年半ぶりに満足いくまで食べた私は多少鈍く、大胆になっていたのだろう。もしかしたら酔っ払いだったのかも。でなければ男を、正面から穴があくほど見詰めるなんて出来ないはずだ。

「・・・何ですか」

 高田さんの怪訝な声にハッとする。急いで視線をずらした。

「あ、失礼しました。えーっと、いえいえ・・・あら、何聞こうと思ったんだっけ?・・・えーっと・・・」

 思考が飛んでワタワタと慌てる。彼はそれを興味なさそうにちらりと見ると、コーヒーに角砂糖を2つ落とした。

 私は落ち着くためにブラックで飲みながら、それをへえ、と眺める。

 ・・・コーヒーに砂糖入れた。珍しい営業だな。この顔で甘党とか?・・・顔は関係ないか。

 営業職は基本的にはブラックでコーヒーを飲む。色んなところで飲み物を出される際、好みがあると相手に面倒をかけるからだ。

 一々砂糖やらミルクやら入れるのが面倒臭くなるのはこちらとて同じこと。

 胃は荒れるが、それもいずれ慣れる。そして朝から晩までブラックでコーヒーを飲むことになるのだ。

 この人、砂糖入れたけど。

 ふーん。

 あ、思い出した。

「思い出しました、聞きたかったこと!えーっと、高田さんて、平林さんとペアで回ってるんですか?」

 いきなり話し出した私をちょっと驚いたように見る。でも少し間を空けたあと、ゆっくりと首を振った。