へえ、珍しい・・・。よく考えたら話すのも初めてだよな。挨拶、それか「はい」くらいしか聞いたことがない、かも。いつも隣にいるミスター愛嬌が話してるから、この人と話す必要がなくて。

 私が今度は呆然と彼を見ていると、視線を持て余したように目をそらして高田さんが言う。

「ご飯、そんなに珍しかったんですか?」

 あ、質問されてるのか。そう気付いた私は、いえいえ、と急いで手を振る。

「えーっと・・・諸事情ありまして、結構長い間食事に興味が持てなくて、ですね・・・。それが、さっきは久しぶりに美味しく感じて・・・バクバクと」

「食べてましたね」

「はい、食べれました」

 何となく、そのまま黙る。よく考えてもまだ判らないけど、どうして私はここで高田さんと二人でテーブルを囲んでいるのだろうか。

 あ、そうだ、平林さんのせいだった。あんにゃろう。

 一瞬ムカついたけど、お腹が満たされていた上にビールまで飲んでいる私はそれ以上機嫌を悪化させることが出来なかった。空腹が満たされると人間は不機嫌になれないらしい。

 コーヒーが運ばれてきて、ちょっとホッとする。機嫌が悪くない私は、もうどうでもいいやと口を開いた。

「あのー、高田さんは・・・」

 何か?という表情で彼は顔を上げた。言葉が続かないで思わずマジマジと見てしまった。

 うーん・・・格好いいなあ。マトモに真正面から見たの初めてだけど、綺麗な顔~。