ようやく紀子が死んだとき、2人の顔は涙でグシャグシャに濡れていた。


肩で呼吸を繰り返していたかと思うと、部屋の隅で嘔吐する。


それでも戦いは終わってはいなかった。


このバトルは最後の1人になるまで続くのだから。


「おい、いいよ俺の事殺して」


隅で嘔吐していた薮木君へ向けて中尾君がそう言った。


中尾君は驚いた表情で振り向く。


薮木君の表情は本気だ。


「なんで……?」


中尾君は口元を制服で拭い、そう聞いた。


「お前がイジメにあってるの、見て見ぬフリしてた」


薮木君の言葉にあたしは目を見開いた。


まるで友人へかけるような言葉に、周囲もとまどった表情を浮かべている。


そもそも中尾君と薮木君が仲が良いなんて思った事は一度もなかった。


中尾君はイジメられっこだけれど、薮木君は違う。


それほど悪い生徒でもないし、イジメられるタイプでもなく、ごく普通の生徒となにも変わらなかった。


「俺は……別に……」


中尾君は薮木君から視線をそらせた。