「桜井さん。
 顔が暗いですよ?」
 
 心配そうな瞳で今井さんが言う。


「そう?
 なんでもないから気にしないで」

 イスから立ち上がった俺の腕を、今井さんがパッとつかんだ。

「こういう時はお酒でもパァッと飲みませんか?
 私、素敵なバーを見つけたんです」


「あ・・・」

 一瞬ためらった。

 チカがいるのに他の女性と出かけるなんてマズイかな、と思ったから。


―――でも、飲みに行くだけなら。


「・・・いいよ。
 行こうか」


 やましい気持ちなんてない。

 職場の後輩と軽く酒を飲むだけ・・・。