迎えに来たエレベーターに、航大と乗り込めば。
となりに並んでドアが閉まった瞬間、きゅっと手を繋がれる。
もしもこれが、地上に到着するまでの間を覚悟した上の短いものなら。
なんて、可愛いんだろうと思ってしまった。
トムブラウンのサングラスの奥に、どんな瞳があるのか見えないけど。
2人だけの密室で言葉がなくても。
航大の手の平の熱さは、
私の心と体を、ちゃんと繋いだ気がした。
エレベーターが開くと、何事もなかったかのように一人で先に降りて行く。
何百回も見ている筋肉質な背中が、今日はやけに、他人事に見えない。
なんていうか。
すごく近しい気がして、だけどその感覚は切ない。
「理沙子さんっ!」
『わっ、』
真っ直ぐ走ってきた瀬名ちゃんに、ムギュっと正面から抱きしめられた。
「じ、じ、事件なんです!会いたかった~~!!!涙」
『どーしたどーした?!笑
ていうか、わざわざ空港まで送ってくれるなんてありがとうね。』
ぽんぽん、と頭を撫でながら思い当たる。
そっか、昨日直生さんと二人でご飯食べたろうから・・・
「ううん。それより、車中で話聞いてくれます?私もう、気が狂いそうで・・・涙」
『やばいじゃん。聞く聞く。』
「チェックアウトは済ましてあるんで、早速・・・
って、あれ?理沙さん、荷物は?」
空の私の体に気づき、私の両手を取り不思議そうな瀬名ちゃんに。
「・・・ぷっ。」
聞きなれた、笑い声が降ってきた。