“8:00に2階のロビーで待ってます”


瀬名ちゃんのメールを受け、たった三日の城を後にする。


80Lのリモワは航大が引き、私は身軽。
当たり前に誰かに甘やかされる感覚が、久しぶりでくすぐったい。





私が荷物の整理を始めた、夜明け頃。

航大がシャワーを浴びているとき。チョコからのお見舞いメールに、やっと返信した。


すぐに既読マークがつき、iPhoneが着信で震える。



『もしもし~おはよ。起きてた?』

「理沙!まじ心配した!体は?今どうなの?」

『ごめんね、連絡遅くなって。おかげさまで回復したよ♡
ご心配おかけしました。』

「理沙は午前中の便で帰国でしょ?
ちょっとだけ顔見たいんだけど、今から行ってもいい?」

『あー・・・』



バスルームの扉を、振り返る。


「航さんがいるからだめ?」

『え?!』


何で分かったの?!

ブワッと、体中の毛穴から汗が噴き出した。



「嘘だよ。超分かりやすいんだけど。笑
そりゃやめとくわ。」



嗚呼。終わった。



「理沙、俺が言うのも何なんだけど。」

『なに?』

「航さんの彼女のこと、そっちは心配いらないよ。
たぶんそこらへんは大丈夫。」

『なに、急に。』

「だな。笑
けど、本当にたぶん、そこらへんは大丈夫だから。」





“ちゃんとするから、待ってて”

甘い囁きが、耳に蘇る。






『チョコ、帰国したらそっこー会いたい。』

「うん。あの蕎麦屋行こう。」




チョコにはいつも、全てを話さなくても何となく伝わって。楽ちんで安心で。
単純な私は、チョコとはペースが合うのかななんて思ってた。


だけど本当は。

チョコは、すごく周りを見てる人だから。
読んで、感じて、察してくれてるんだ。



私には勿体ない

パーフェクトな、男友達。