タフッと柔らかな音で閉まったドアの前で。
行き場をなくした私と、巻き添えになった直生さん。
女子会、中止になっちゃった。
バーベキュー、戻ろうかなぁ・・・。
だけど、張り切って買いすぎた宴のお供。
勿体ないしなぁ、けど一人で食べるのは寂しいなぁ・・・。
まさか、七瀬くんが出てくるなんて驚いたけど。
理沙子さん、熱上がってたんだ。
今日一日、一人にしてビーチへ行ってしまった自分を後悔した。やっぱり私が、そばで見てあげられていたら。
「今日、花火あがるの知ってる?」
直生さんの声で、はっと我にかえる。
「あ、す、すいません!
ここはもう大丈夫なんで、直生さんはとりあえずバーベキュー戻ってください。みんな待ってるし。」
そう言いながら、たくさん持たせたままだったビニール袋に手を伸ばし、受け取ろうとして。
だけど直生さんはグッと力を入れて、袋を受け渡さない。
「瀬名さんは?一緒に戻る?」
「私は・・・どうしようかな。
とりあえず部屋に戻って、これを冷蔵庫に入れたり整理します。」
「ホテルの人に聞いたんだけど。
今日の花火、この先のビーチからが一番きれいに見えるらしくて。」
「え?花火?今日、花火あるんですか?」
花火。夏っぽくていいなぁ。
バーベキューでみんなと見れたら。
やりきった海外ロケ。最高の締めくくりになるだろうな。
「このまま行かない?」
「え?」
「せっかくこんなにお供があるわけだし。
付き合っていただけると、ありがたいんですが。」
どくんと跳ねた、自分の心臓の音が聞こえた。
「俺とでよければ、だけど。笑」
直生さんと一緒でも行けない場所なんて
私には、どこにもない。
「い・・・いいんですか・・・?」
「何が?俺が誘ってるんだけど。笑」
泣きそう。
こんなご褒美をもらえるほど、
私がんばれてないのに。
「・・・よろしくお願いします」
「こちらこそ。笑」
行こっかと笑い、エレベーターの方へ戻る直生さん。
背中を、追いかける。
初めて会った日から
憧れた、この背中を。
湧き上がる自分の欲に、嫌になる日も傷つく日もあるけれど。
直生さんの夢が、叶いますように。
この背中の後ろにいれば、
浮かんでくるのはそれしかなくて。
「喉乾いたね〜。花火の前に飲んでもいいかな?」
ビールの袋を持ち上げて、振り返る三日月の目が。
嬉しくて私は、やっぱり泣きそう。