固い両腕で、ぎゅうっと。
むせかえる香りの中に閉じ込められ、息ができない。
体が、硬直する。
すぐ隣で
ドンドン、と叩かれ震えるドア。
「理沙子さーん!寝てますかー?」
ドンドンと、交互に続くベルの音。
後頭部を優しく強く抑えつけられた私は、航大の胸の中で完全に自由を失っている。
「チッ」
航大の舌打ちと
「しつけぇな。」
呟きが聞こえたと思ったら。
私を右腕で捕らえたまま。
器用に左腕で、ドアを開けた。
私を右腕で、捕らえたまま。
ドアを、開けた・・・?!?!汗
「理沙子さ・・・!な、七瀬くん?!?!」
助けて!瀬名ちゃん助けて!
私、この人に襲われてます!
こうなったら、そう助けを請おうと思って。
何とか固い胸から顔を出し口を開こうとしたそのとき。
落っこちそうなほど目を見開いた瀬名ちゃんの隣に、全く同じ顔をした直生さんの姿。
な、なんで直生さんが?
辿るその手には、間違いなく今夜の宴用。
トロピカルジュースやサラダにスナック。
これは、2人分?
2人分・・・あ。
こんな状況で、ナイスアイデアを思いつく。
私がいなくなれば、2人分になる。
瀬名ちゃんと直生さんの、2人分。