初めて知る航大の“抱かれ心地”に。
反応できず、ただ抱きすくめられる。
「・・・携帯どうしたの。」
あ、やばい。
朝方電源切ったままだ。
「連絡しろっつったじゃん。」
きゅうっと巻きつく腕に力が入り、ますます胸が苦しい。
怖くて、いろいろ恥ずかしくて、このまま振り返りたくないと思う。
『ごめ・・・』
その、時。
振り絞った声と重なる、エレベーターの到着を知らせる音と。
誰かが降りた気配。
ま、まさか、こっちに、来る・・・?!
やばい、この状況はやばい!
この人“芸能人”!汗
『こ、航大、離して!』
「やだ」
『やだじゃねーよ、一旦離して!!』
甘くまとわりつく腕を無理やり引き剥がして。
とりあえず隠さなきゃと、航大の手首を掴んで部屋の前まで走る。
震える手でゴヤールのトートからキーを探し開いた扉に滑り込んだ。
『・・・はぁっ、はぁっ・・・』
焦った。。汗
見られてないよね?何とか、角を曲がられる前に部屋に入れたよね?
「なにこそこそしてんの?」
訝しげな表情の航大に。
『航大のせいでしょーが!外であんなの困るよ!』
「じゃあ、ここでならしてもいいの?」
少し背を屈めるようにして、すぅっと私を覗きこむ。
『んなわけねー・・・』
ピンポーーーーン
今度は、私の声と部屋のベルが重なる。
ドア越しに聞こえる
「理沙子さん、寝てるのかなぁ。」
瀬名ちゃんの声。
ドアが透けて見えるように、両手いっぱいに今夜の宴の材料を手にした姿が浮かんだ。
さっきのエレベーター、瀬名ちゃんだったんだ。
ど、どーしよう・・・
とりあえず、開けなきゃ。
航大は、知り合いだもんね。とりあえず見舞いに来てくれていた、ということで。
ドアに手をかけようとしたところで
「開けなくていい。」
強く手首を引かれ、前のめりにバランスを崩す。
今度は正々堂々前から
胸の中に閉じ込められた。