ホテルの前でバスが停まって。
楽しかった1日の終わりが見えてきた。
東京とは違う、吸い込まれそうな青の下で1日中笑った私は。
少し頬がひりひりする。
理沙子さんから借りた日焼け止め、遠慮なくたくさん塗ったのにな。
海に入ったからかな・・・
千代さんたちと、先にバスを降りる直生さんが見えた。
直生さんも、少し焼けたのかも。頬が赤い。
いつもの「かっこいい」と「可愛い」の絶妙なバランスが。
今日は、完全に「可愛い」に傾いてた。
一緒に海に行けたなんて。
今日は人生最高の日だったな。
ぼんやり、見つめていると。
やばい、目が合った。
見てるの気づかれた?!?!
瞬間、焦りで息が止まる私に、ふっと三日月の目をくれて。
スタンスタンとバスを降りて行った。
あーあ。
また、好きになっちゃった。
きゅうっと握られた心臓が苦しい。
“好き”に容量オーバーはないのかな。
比例する“切ない”と、後を追いかける“欲”に。
私はいつまで勝てるのかな。
バスを降りたところで、他のスタッフさんたちにバーベキュー不参加の旨を伝え、みんなの輪を離れた。
理沙子さんの携帯を鳴らしてみる。
・・・出ないな。寝てるのかも。
一瞬、部屋に寄ってみようかとも思ったけど。
私もお腹空いたし、このまま女子会の材料調達に向かっちゃおう。
「瀬名さん。」
携帯をポシェットに戻して歩き出そうとしたところで。
振り返ると、同じく輪を外れた直生さんがいた。