「バカなの?」



カードキーをドアに差し込もうとしたところで
犯人を捕らえた。

振り向いたのは、明らかに赤くダルそうな顔。



「・・・ばれてた?」

「ばれてたじゃないよ、ほんと何やってんの!」




あの後、体調がおかしかったのは要くんも一緒。
それなのに、何度止めても理沙子さんを部屋まで自ら運び。私が理沙子さんのお世話をする間、ずっと一緒に部屋にいた。

お互い、もう戻って休もうと一緒に部屋を出たはずなのに。私が要くん用に薬を持って部屋を訪ねた時には、未だもぬけの殻。


理沙子さんの部屋を出る時、キーを手にしていた光景がフラッシュバックした。






瀬「自業自得だよ?帰国してからも、絶対仕事調整しないからね。」

要「大丈夫だよ、今日は一日オフでしょ。一日休めば治るから。」

瀬「治らなくても、まじで知らないよ。絶対庇わないからね。」

要「そんなに怒らないでよ。笑
目が覚めた時、一人にしたくなかったんだ。それに、どうしても一番に謝りたかった。」




・・・そりゃ、そっか。

あんな形で倒れた理沙子さん。責任、感じたよね。



いろいろ、聞きたいことはたくさんあったけど。

これだけ、は。







「手、出してないでしょうね?」



きょとん、と丸くなった目は。



「瀬名さん、意外に俺のこと分かってたんだね。」



感心そうに、予想外の言葉を返した。




「は?!汗
ちょっ、なんかしたの?!最っっっ低!!!」




思わず、掴みかかろうとすると。



「・・・ぷっ、ごめん、嘘だよ。笑
そんな怒らなくても。笑
ごめんごめん、からかっただけ。」



嬉しそうに、楽しそうに笑う。

だけど、振り上げた私の右手を掴んだ手の平は。はっとするほど熱くって。



「・・・冗談言ってないで、早く要くんも休んでよ。」



私の戦意を、喪失させた。



「ありがと。笑」









閉まったドアの前で。
私は聞けなかった、もう一つの質問を思い出す。





“どうして、七瀬くんに連絡したの?”



理沙子さんが倒れたと、七瀬くんに連絡させたのは要くんだ。




ねぇ、どうして?