要さんは、その後私を追いつめることもなく。
勿論、必要以上に触れることもなく。
規則的に、私にフルーツを与え続けた。
最後のマンゴーがなくなると、これまた当たり前のように「じゃ、俺も部屋に戻るよ」と立ち上がった。
『え?なんで?』
思わずそう反応してギョッとする。
なんで、だと?私、何言ってるんだ?
し、しまった・・・
一瞬、驚いたように丸くなった瞳は。すぐに、とろける定位置に戻る。
「だって、俺がいると眠れないでしょ。」
『どっちにしろ、もう眠れないもん。』
それに。
さっき、好きって言ったじゃない。
好きって、ただそれだけ?その先は、ないの?
俺は好きだよ、覚えててねーって。ただ、そういうこと?
いやもちろん、迫られても困るんだけど。
なんか、すっきりしないんだけど・・・
「なに?何か、不満そうだね。笑」
横になる私に視線を合わせるようにしゃがみこみ、私を見つめる。
我ながら言わせてもらうと。それはそれは、愛しそうに。
『要さんって、何なんですか?』
「え?」
『好きって、言ったのに。』
嗚呼、やめろ自分。
『私と、どうにかなりたいとか、私をどうにかしたいとか、そういうのないの?』
心の中の自分が叫ぶ。
嗚呼、終わった、と。
笑わなくなった、目元。
ゆっくりと、頬に触れる左手の熱。
「知りたい?」
囁くように呟いた声は、これまでのどの声よりも
切なく、甘く。
妖しく、私を誘う。
『知り、たい・・・』
堕ちていく。甘い目眩に負ける。
答えも反応も、決められないままに。
「俺のものになって。」
優しい命令と耳にかかる息の熱さに。
私は思わず、目を閉じた。