あまりにも簡単に。

当たり前のように、そう口にしたから。


聞き間違いかと思ったのに。






「好きだよ。初めて会った時からずっと。」





目をそらさずに続けるから。

これは聞き間違いではないことに気づき、耳が熱くなる。



からかって言ってる?

・・・目では、ない。




甘い眼差しを降り注ぐ要さんに感じる息苦しさは、不快なものではなく。
私の前髪を分ける手に感じるくすぐったさも、拒絶の延長ではなく。

ただ、その視線と声に、ひたすら私の神経はとけそうで。



『なんで・・・?』



やっと、言葉を絞り出す。



『私、きっと要さんの思ってるような人じゃないですよ。思い違いだって、がっかりさせますよ。
航大には、悪魔だって言われるし。』


ピクッと動いた眉。


「へぇ。」


驚いたように目を丸くして見せて



「じゃあ、いま覚悟したよ。」



次はチェリーを、私の口元へ運ぶ。







「これから一緒にいてくれるなら。俺は、どんな理沙子でもいい。」







体を支配する甘さは、チェリーの糖分か、要さんの甘い媚薬か。

こんなに甘さを持った人だとは知らなかった。
甘さの奥にきっとある、私のまだ知らない危険。


みずみずしくて甘いのに、1グラムの酸味。

口内を満たすチェリーのこの味は、要さんの味だと錯覚する。