覚悟をして覗いたバスルームの鏡に映るのは、つるんと素顔の自分。
あれ?メイクは?
『あの・・・』
もしや、そんなことまで要さんにさせてしまったのかと、おずおずとバスルームのドアを開けると。
月明かりを注ぎ込む窓の近くに立っていた、長身。
スタイルいいなぁ・・・
逆光に目を細めて。思わず、見惚れる。
振り返った彼は、何も言わずに戻ってきて。
一瞬で、また私の体をさらう。
正直、まだぼーっと頭が熱くて。情けないことに、ふらつく感じもあったから。
体を預けている感覚は、とても安心で心地よかった。
ゆっくり私をベッドに降ろして「寒くない?」と柔らかく微笑む。
『あの・・・私のメイク、落としてくれたりしました?』
「あ、それは瀬名さん。朝起きてメイクしたままの顔見ると、ますます疲れるからって。
色々使ってなんやかんやしてたよ。笑」
瀬名ちゃん。。涙
なんていい子なんだろう。天使に思えてきた。
「そうだ、果物食べる?瀬名さんが剥いたのが、冷蔵庫にある。」
『え、食べる!』
私の返事にクスッと口角を上げると、キッチンの方へ歩いて行った。
戻ってきた彼には、チェリーとマンゴー。
彼の差し出すフォークに迷うことなく口を開けると。
甘さと冷たさが、私の体を支配する。
目の前には、完熟のマンゴーにも負けないとろける甘さを纏う彼。
『・・・優しすぎません?』
「え?」
『なんか、お父さんみたい。』
「お父さん。笑」
正確に言えば、私にお父さんはいないのだけど。
きっと、世のお父さんはこうやって子供に無償の安心を注ぐ。
「理沙子ちゃん。」
『はい?』
「お父さんではなく、“彼氏”を目指したいんだけど。」
はい?