反射的に息を止めたまま、ますます混乱する頭。


必死で順を追って、頭を整理するよう自分で自分に言い聞かせる。






まずは。

ここ、私の部屋だよね?



撮影は・・・

終わったよね。OKって、聞こえたよね。



気づいたら要さんの腕の中にいて。
耳にかかった息が熱くて・・・

いや、違う違う違う!汗



・・・それから、どうなったっけ?

“要さんの腕の中”から。
何がどうなって、私は部屋に戻ってきたんだっけ?





そして、どうして。

どうしてここに要さんがいるの?




だめだ、さっぱり分からない。






危うくため息をつきかけて、慌てて要さんを伺う。

要さん、寝てる?



息を潜めて様子を伺うと。
静かな寝息で、肩が動いてるのが分かった。

ひとまず、喉が痛いほど乾いてることに気づいて。水を探そうと今度はそっと体を起こそうとする。





瞬間、左手にキュっと感じた力。





「・・・どこ行くの・・・。」




寝起きの低い掠れた声と。
左手が繋がれていたことに、今さら気づく。



私の左手のひらと絡まる、要さんの右手のひら。


『あ、いや、水、飲みたいと思って。』


なぜか、焦る私。いやいやその前に。
この手は何???





「・・・ああ。」


むくっと起きあがり手を離す。

スリッパの音を立てながら、キッチンへ向かいペットボトルの水を持って、戻ってくる。



今度はベッドサイドに腰掛け、私の背中に腕を入れると。

「起こすよ」と囁いた。

ゆっくり私を起こしたら、カリッとペットボトルの蓋を開けて。

「どうぞ」と微笑んだ。




身がすくむ。

薄暗い月明かりの中で

この微笑みは

危険。






いつの間にか要さんの右腕は私の肩を抱き、左手で器用に水を差し出す。


『どうも・・・。』


一度口をつけたら、夢中で喉へ流し込んで。
口元を伝う水もそのままに、一息をつく。



「もういい?」

『ん・・・。』


要さんは私の濡れた口元を、親指で拭いペットボトルを受け取ると。

残りの水を飲み干した。