打ち上げの一次会に、やはり陽斗チームは現れなくて。
暗黙の了解で、到着を待ちながらの二次会が始まっていた。
みんな、すげぇいい顔。
一人違わず同じ達成感を共有するこの時間が、何よりも幸せだ。
今回の曲を渡されたときに感じた興奮は、今もなお冷めない。
初めての海外でのPV撮影だったけど。
スタッフ含め全員が能力を出し尽くして、最高のものができたと思う。
あとは、これまた最高のスタッフに編集を委ねるだけ。
そして、また戻ってきたバトンを受け取るように。俺たちのプロモーションが始まるんだ。
行ける。
この曲で、俺たちは確実に次のステージへ行ける。
今なら、何だってどうにだってできる気がする。
言葉にならない、湧き上がる達成感と興奮を体中に感じていたら。
やはり、浮かんでくるのは彼女の名前。
場所も時間も選ばず、当たり前のように俺の中に現れる。
いい加減、どうにかしないと。
彼女を想うために、俺はただただ裏切ったあの人からの罰を受ける。
いつまで
どこまで
「航さん。」
他のメンバーの席で騒いでいたチョコが、いつの間にか隣に来ていた。
「・・・おー。びっくりした。笑」
自分から寄ってきたくせに、手元のビールグラスをじっと見つめて黙る。
何か決心したように、子犬のような顔を上げた。
チ「あと何時間後にかは分かることだから言うけど。」
「は?」
チ「理沙子が、来てるんだ。」
「・・・は?」
チ「陽斗さんの相手役の女優、理沙子なんだよ。」
思考が、完全に、止まる。
チ「昨日、俺も偶然地下のジムのとこで会ったんだ。昨日、ハワイに到着したらしい。
スカウトしたのは直生さんで、瀬名さんも一緒に理沙子に口止めしてたって。
俺も知ってたのに、言わないでごめん。」
チョコの声は夢みたいに響いて。
ばかみたいに混乱する俺の脳内は、流れてくる言葉を処理できない。
「・・・謝ることじゃないっしょ。」
やっと出た言葉は、誰がどう聞いても上っ面の強がりで。
理沙子が来ている。
今、陽斗といる。
猛烈な息苦しさが襲ってきて。
俺は
唇を固く結ぶチョコに、それ以上何も答えられなかった。
きっと、チョコも分かっている。
陽斗は
既に堕ちている。