なんやかんやと押したミーティングから、やっと解放されて。

俺も挨拶したいという直生さんの隣で、理沙子さんの部屋の電話を鳴らしたけど。




一向に、出ない。

疲れただろうし寝ちゃったのかな?なんて話しながら、何気なくフロント横のバーを覗くと。




直「げ、チョコ!」

チ「やっと来た!涙」

『瀬名ちゃーん!』


私以外の三人の声が、陽気にかぶった。

千代さんに、見つかってたか〜。笑










とりあえず、今日のところは遅くなっちゃったから。部屋で軽く飲んで解散しましょう、と理沙子さんの部屋で、2人ビールをあけた。



『すっっっごい、きれーな景色でしょー・・・』


少しだけ酔った理沙子さんと。このハワイに来て、1番の夜景。
男子感涙のシチュエーションなんじゃないか、私はほくそ笑む。




『瀬名ちゃんって、直生さんが好きなの?』

「え?!」


思わず、急に突き刺さった名探偵の推理に、危うくビールを落としそうになった。

『分かりやすい〜』とケラケラ笑う理沙子さんに、悔しいような、嬉しいような、変な気持ち。
誰にもバレたことないのに、どうして分かっちゃったんだろう。







出会ったあの日から。直生さんには、素敵な彼女がいるから。




「私は。そばで直生さんを見られるだけでいいんです。」


自分に言い聞かせるように、そっと呟くと。


『そっか』と優しく微笑んだ。









「・・・理沙子さん、片思いとかしたことあります?」


こんな恵まれた人に私みたいなのの気持ちが分かるのかと、純粋に疑問で聞いてみた。


『みんな最初は片思いじゃないの?』


当たり前のようにサラッと言うから、ああ、同じ人間だったかと今さらながら実感する。









『好きになる準備が出来た時に、好きになれたらいいのにね。』




理沙子さんが、独り言のように呟いた言葉は。

私には、あまりに切なく、あまりに優しくて。




大好きなあの笑顔が溢れてきて、私はグッとビールの缶をあけた。








私の願いは。

真っ直ぐ前を見据える横顔を、一日も長くそばで見ていられること。



それだけなのに。

どうして、どんどんどんどん欲が出てきて。



こんなに切なくなるんだろう。









堤防が決壊するように。

気づけば、私は泣いていて。



理沙子さんは、私の背中をいつまでもさすってくれていた。