愛犬、レオンを返すという甘い言葉に誘われ。
また、まんまとこの人の手にひっかかってしまった。
泣く、騒ぐ、暴れる。
過密を極めるスケジュールの中、死ぬ気でやって来た自分を呪う。
何度も同じ話をしているはずなのに、降り出しに戻ったかのように話は通じない。
「・・・レオンはどこ。」
「そろそろ戻ってきてよ、航。」
「出て行ったわけじゃない。終わったんだよ。」
「・・・お願いだから、帰ってきてよ。
あたしを一人にしないって言ったじゃない・・・」
Elviraの白いTシャツの胸元には。
彼女のリップと、こぼれた赤ワイン。
あきらめてくれるなら、何だってする。
永遠を口にするほど愛した。それでも去る、大罪。
どんな罰だって受けるから。
だからどうか、もう行かせてくれ。
俺はもう、誰といても。
ただ一人しか、思い出せない。