言われたとおりに、突き当たりの角を右に曲がったのに。
『あれ?黄色のカートなんて、なくない・・・?!』
“黄色のカートがある前の部屋、A3がplanetの楽屋です。”
進めど進めど、瀬名ちゃんの言う目印が現れない。
あのアイドルみたいな女の子たち。
さっきの通りにも、いたよね?
どうしよう、さっきから同じ場所をひたすらグルグルしてる気がする・・・
誰かに聞こうか?
けど、こんなもろ一般人が「planetの楽屋教えてください♡」なんて。
どう見ても、怪しすぎるよね。
ていうか、結構迷っちゃったけど。
もはや帰ってたりして。
自分の番が終わっても、まだしばらくいたりするのかな?
早く会わなきゃ、彼に______________
不安な心を振り払うように、勢いをつけて振り返ったら。
首元で、彼から貰ったパスが揺れた。
もう一度、さっきの入り口まで戻ってみよう・・・!
「理沙!」
ふと、呼ばれた響きに。
身体の向きが、反射的に変わる。
『あ~~~!』
「来てたんだね、お疲れ~。」
見慣れた大きな笑顔に、不安がはち切れて駆け出した頃には。
直生さんの姿も、その後ろに見えた。
『チョコ!ちょうどよかった、助けて!』
チ「なになに!笑」
直「おお、理沙ちゃん。・・・ってあれ?!なんで?!」
直生さんへの会釈も、そこそこに通り過ぎて。
チョコに救いを求めようとしたら、直生さんの目が今にも落ちそうなほど見開くから。
無視、できなくなってしまって。
『亜由子さんから聞いてません?』
直「あゆ・・・子さんからは、聞いてないよね。」
チ「あれ、聞いてないんすか?」
『えっ?!』
直「えっ?!?!」
にこにこと目尻を下げて笑うチョコを。
驚愕の眼差しで振り返った直生さんの声は、私のよりも大きかった。
直「チョコ、集合。」
集合と言いつつ、足早にチョコに近づいて“集合”したのは直生さんの方で。
直「いつから?」
チ「うーん、そうっすねぇ・・・」
頬を乙女に染めて、チョコの肩を抱く直生さんと。
余裕の笑みで首を傾げる、チョコ。
残念ながら、チョコは。
私と直生さんの想像をはるかに超えて。
鼻の効く、名犬ラッシーだったようで。
『ちょっとタンマ!ストップ!
私、時間ないんだってば!!』
申し訳ないけど、私。
男の恋バナに微笑ましく付き合ってる暇はない。