首筋から、頬に上がる手の平。
反対側の頬も。
同じように、彼の手の平で包まれた。
「俺たちはまだ、分かってるように見えて、分からない事だらけなんだよ。
お前の笑う顔も泣く顔も。
たくさん見て来たんだろうけど、俺はまだまだ足りないよ。」
サングラスの奥の瞳を見つけて。
無性に、胸に込み上げてくる、何か。
「お前みてぇな女。
一生かかっても、俺には足りねぇんだよ。」
だって、思っていたよりも、ずっと。
ずっとずっと、柔らかくて優しい。
「だから諦めて、もう俺のとこに来い。」
『・・・無責任なこと言わないでよ、私は他に女がいるような、』
「もう終わったから。」
いつものように、上から見下ろしてくれないと。
こんな、同じ高さで諭されるように話されると。
「もう全部、終わったから。
だから、迎えに来たんだよ。」
声に、指先に、酔ってしまいそうな自分が怖くなる。
「理沙子。」
顎に、キュッと力が込められて。
外していた視線は、航大へと戻された。
喉が苦しい。
じりじりと上がってくる熱に。
込み上げてくる、想いに。
近くなる顔に。
手を伸ばしてしまいそうになる自分に、必死で堪える。
「好きだ。」
溢れる。
これまでの、景色が。
息があがる。
視界が滲む。
その。
どれも違わない、温かさに。
「一生、後悔させない。
他の男といれば、なんて思わせない。
__________俺に、賭けろ。」