白よりも、ロゼが好きだと。
確か、理沙子もそうだった。



「お前がジジイになる頃には。
理沙子もなかなか、いい歳だと思うぞ。」


鞠子「はいっ、乾杯しよ~。
翔くんの、最初の挫折を祝ってカンパーイ!」


翔「大丈夫、あいつなら。」



理由は。
ママと初めて飲んだ、お酒だからと。

 

翔「そこそこのいい歳、になっても。
そこそこの、いい女だよ。」


返事の代わりに。
鞠子が掲げるはしゃいだグラスに、小さな音を合わせた。










翔「そういえば、倫介に伝えろって。
“明日、絶対遅れんな”だって。」


「・・・やばいじゃん。お前が今、日本で俺といることバレてるじゃん。」


鞠子「さすが、うちの子ね♡
じゃあ次は出来た理沙にカンパーイ!」


なんだそれ、と。
笑いながらも応じる翔の目は、少し滲んで見える。









鞠子が、一代で築いた横浜の城。
会員制のはずのそこは、見る間に混み合い。

別の席に立った鞠子は、もう長く戻らなくなった。










翔「お前のとこ、髭とホクロの若い奴いる?」


「髭とホクロ?

・・・あ。」


翔「なんだよ、やっぱりお前かよ。
倫介くせぇと思ったんだよ。笑」



背筋を伸ばして、両手で口を隠して笑う。
理沙子と見紛う鞠子の姿が、目に入った。



翔「あんなの、おっさんの対戦相手に持ってくんじゃねぇよ。
理沙子に会いに行った二回中、二回ともいたんだけど。
素行悪すぎだろ、指導しろよ。笑」


「すいませんね、うちの息子どもが。笑」


翔「変なのに撮られたりしてさ。
あいつ巻き込むなよ。」


「大丈夫、そこらへんはちゃんと躾けてあるから。」













酷だな、とは思ったけれど。
次の賭けを、申し出る。



「どっちだと思う?髭とホクロ。」



翔「賭けるか?笑

_______俺、多分当てるよ?」






悪戯に、細くなる瞳に。

この男を“操縦士”と呼んだ理沙の声が蘇る。




現役かどうか、確かめよう。



翔「お前は、どっちにどう賭ける?」



「そうだな・・・」





“世界一の男”の座は、退いても。

操縦士としては、現役であることに。




俺は賭けるよ。