直生さんの話は、やっぱりおもしろいし。
話が途切れないように、絶妙なタイミングで次の話題を振ってくれる。
日曜の夜、直生さんを独り占め。
こんな、来世でもまた巡ってくるか分からない、夢のような場なのに。
私はいたたまれなさに包まれて、どこか会話に乗り切れない。
お酒で気分を変えようと、グラスに手を伸ばすたびに。
「ペース早くないか?」
「今日はゆっくり飲もうね」
何故かちょこちょこストップをかけてくる直生さんにも、なんか調子が狂う。
ちょっと大将に挨拶してくるね、と。
席を立つ直生さんと入れ替わりに、女の子が新しいおしぼりを運んで来てくれた。
またしても、じぃっと音がするほど。
食い入るように、私を見つめてるのを感じる。
目を合わせるのが怖くて、机の下で爪を弾いて気づかないふりをしてると。
「あのっ。」
抑えた声で、声をかけられた。
「直生さんの、彼女さんなん?」
思わぬ問いに、顔を上げると。
中学生か______高校生、かな?
近くで見ると、思っていたよりもずっと幼い顔。
「・・・違いますよ、全然彼女なんかじゃありません。
会社の人です。私は、直生さんの____部下、かな?」
ここでの直生さんの立ち位置が分からなくて。
曖昧に、そう答える。
「じゃあ、earthの人?」
「まあ、・・・そう、ですね。」
瞬間。
彼女の目は、みるみる丸く見開かれて。
その瞳は、光を思いっきり吸い込んでキラキラと光った。
「やっぱり!あのね、直生さんね。」
嬉しそうに、お盆を抱きしめながら私に耳打ちする。
「ずぅっと前から、うちに来てくれようっちゃけどね。
あ、planetとか、そんな有名になるずぅっと前ね。
今より全然、かっこよくなかった頃ね。」
彼女の、誇らしげな口ぶりに。
思わず。
ふふっ、と笑ってしまう。
知ってるよ、直生さんのその頃。
だけど私にとっては、直生さんっていうだけで。
どの時も、世界一になるんだよ。
だけど、次の言葉に。
私は。
「うちに誰か連れて来たこと。
おねぇさんが、初めてよ。」
目の前で、星が散った。