女同士の、深夜の打ち明け話。
やっぱりチョコと過ごすより、少し色気のある空間。







陽斗くんといると私は自分が分からなくなる、と言ったら。


「けど、それは要くんも一緒だと思うけどなぁ。
彼、相当ストイックなんですよ。
真面目だし、感情のコントロールも上手。
理沙さんの話聞いてると、とても同じ人とは思えない時がある。

要くん自身も、そういう自分には戸惑ってるんじゃないですか?」


『うーん…そうなのかねぇ…』


時々、我を失ったように熱くなる瞳。
かと思えば、蕩けるような甘さをもたらす微笑み。



「ねぇ、理沙さんって、七瀬くんのこと“分からない”って思ったことある?」


『航大?
…こいつ次何するんだ?!っていうような、そういう分からなさ?
あるある。』


「違う、それは警戒でしょ。笑
そうじゃなくて、何考えてるのかな?みたいな。」


『え、そういうのはない。』


横顔から、仕草から、返事の速度から。

近づいていいときも、だめなときも。
何となく分かるし。
向こうも、そう思ってると思う。



瀬名ちゃんは、ふふっと何故か嬉しそうに笑った。


「やっぱり。私たちは、ほとんど毎日七瀬くんと一緒にいるのに。
それでも彼のことが、全然分からないんですよ。」




ことりと、胸に降ってきたその言葉が。
甘く開いていくのを感じて、慌ててホットワインに手を伸ばした。





「どっちでもいいと思う。
うちの会社一押しの、今をトキメク二人ですもん。」


『翔さんは、入らないの?』


「うん、そこはないなって分かった。
理沙さんはニューヨークに行きたいだけでしょ。」





半分体を起こして、悪戯に私を覗く丸い目に。
明日、たくさんの嬉しさが映るように願った。



 



「なんで、直生さん“デート”なんて言ったのかなぁ…。
飲み行こうぜ!とかで、良かったのに。」


『そりゃあ、“デート”にするつもりだからでしょ。』


「彼女いるのに?
単に、私に気を遣ったんじゃないかと思うんですけど…。女の子扱いしなきゃ、と思ったとか。」


枕の上で組んだ腕に顎を埋めて。
キャンドルの光を真っ直ぐに見つめる横顔は。
いつにも増して、あどけない。






『適当なこと言いたくなかったから、今まで言わなかったんだけど。』


寝返りを打って、長い髪を反対側に寄せた。


『私、あの人彼女いないと思うよ。』