なに。
言ってるんだ、この人。
『陽斗くんを巻き込まないでよ!』
翔「無理は承知の上で、お願いできませんか。」
『できないってばっ、』
陽「・・・僕がいても、大丈夫な話ですか?」
翔「問題ありません、すぐに済みますから。お願いします。」
最低最低、最低。
こんな話に、他人を立ち会わせようなんて正気じゃない。
陽斗くんの腕にしがみつきながら、翔さんを睨みつける。
陽「理沙子。」
無視して帰ろう、と口を開きかけたら。
陽「俺はかまわないよ。どうする?」
ぽん、と。
後頭部にあの柔らかさが降ってきた。
陽「もちろん、理沙帰ってほしいなら、帰る。俺は、二人で話したほうがいいと思うし。
どちらにしても___________話は、聞いたほうがいいと思うよ。」
『一人にするの・・・?』
なんだか、感情がぐちゃぐちゃだ。
だけど、どうしても。
この腕を、離したくない。
陽「しないよ。一人になんて、させない。」
見上げれば。
いつの間にか、穏やかさを取り戻した瞳。
陽「一人で聞くのが怖い話なら、俺が一緒に聞くよ。」
『・・・怖くなんて、ないよ。』
陽「あ、そっか。ごめん。笑」
『けど、一緒にいてほしい。』
陽「うん。」
見上げる、柔らかい表情には。
私を不安にさせる要素なんて、一つもなくて。
深く息を吸って、翔さんに向き直った。
『絶対、10分で帰ってよ。』
翔「分かってる。」
『家のものには、何も触らないで。すごい可愛い犬がいるけど、絶対触っちゃだめ。』
翔「約束する。笑」
『笑わないで。』
「はい。」
ふと、隣を見ると。
今度はなぜか、陽斗くんが微笑んで私を見てた。
兎にも、角にも。
舞台は、整った。