彼女が部屋に入ってきた瞬間、世界はスローモーションになった。



真っ白なドレスの裾を掴んでふわりふわりと近寄ってくる様は。
子供の頃妹と見た、ディズニー映画の一場面のようだった。





彼女だけが発光体で、周りは色を失った。




“直生さん”と呼んだ声で、脳内に甘い麻薬が広がった。
鈴を振ったような、軽くて甘い音だった。



『こんばんは』と目を見据えられたときには、体が痺れた。


まさに、甘い目眩。知れば知るほど、この人に嵌っていくだろう予感がした。





両手で顔を隠して笑う仕草。

イタズラに小首を傾げて、俺を覗き込む。

ほんの一瞬、けだるそうに見せる表情には色気が薫った。









こんなに可愛い人を見たことがない。
何度も何度もそればかり思った。









今は恋はしないと決めていた俺は。
あっさり背中から、深い穴に墜とされていく。