「“女の子に着て欲しい服”・・・あ、ビキニビキニ。」

「もう、これ中高生が読む雑誌だって!笑」



収録合間の楽屋で、配られた雑誌のアンケートに。
散らばってめいめいで記入する。

ふざけ合いながらも、意外に書き進めているメンバーと。
その隣で笑いながら、きっと自分のものには
“正解”を書いている陽斗。


チョコは、少し離れた端の席で。
向かいの直生さんの話に、何か真剣な顔で頷いていた。





__________だめだ、全然頭に入らない。



「チョコ。」


右肩を叩くと、子犬が顔を上げた。


「ちょっといい?すいません、直生さん。話の途中で。」


にこやかに頷く直生さんに軽く頭を下げて、親指で楽屋のドアを指した俺に。
不思議そうに立ち上がる、チョコ。












「どうしたの?今日、顔すげぇ怖いよ。」


慌ただしく局のスタッフが、走りながら話しているのが見えた。


航「いなくなった。」

チ「は?」

航「あの人、レオン返していなくなった。」

チ「レオン・・・まじで?」

航「色々思いつく限り当たってんだけど。全然、見つかんなくて。」

チ「まじかー・・・。」

航「でさ。すげぇ前に・・・デビューしたての頃、あの人と三人で飲んだこと、あったじゃん。」

チ「うん。あったね。」

航「そんとき、一人遅れて来た子がいたの覚えてる?彼女が、後から呼んだんだけど。」

チ「・・・ああ!あの!超個性的な!」

航「チョコを押し倒した子。あの戦闘力の高い。」

チ「だから思い出してるって。笑」

航「あの子の連絡先、分かんねぇかな?」

チ「・・・分かるかも。
向こうが変わってなければ、だけど。そっか、あの人と仲いいって言ってたね。」


チョコが取り出すiPhoneに。念力レベルの願をかける。


チ「あった。かけてみるか。」



さすが、顔色一つ変えずに。
言葉で要望を確認せずに。
「今?」なんて、抜けたこと言わずに。

当たり前のように、起きた事柄の続きを実行する男。





何てことない顔をして、携帯を耳に当てる姿に。
理沙子がよく言う、

『チョコ、エスパーじゃないかと思うんだよね。人の気持ちを分かりすぎる。』

あの一言が、脳裏をよぎった。