月曜早朝の六本木は、それだけで新鮮だった。
こんなに白くて明るい時間に、陽斗くんと2人で車の中。
さすがに、もう右手は自由だったけど。
見慣れた車の中も、景色も。隣に彼が静かにいるだけで、とても清潔で眩しく見えた。
走り出して、すぐに見えた背の高い私の城。
さすがご近所さん、車だと5分もかからないくらいの距離。
『送ってくれて、ありがとう。今日も仕事がんばってね。』
「こちらこそ、ありがとう。本当に、最高の休日だった。」
短い、沈黙。
降りようかな。まだ、何か言おうかな。
それとも私。
降りたくないのかな。
「これから、少し忙しくなるんだ。
しばらく、会いに行けないかもしれないんだけど。」
『そうなんだ。』
忙しいって、際限がないんだな。
朝まで仕事をしていた日を、たくさん知ってる。
これ以上の忙しさの中に、身を投じていく彼。
「いつも、理沙子のことを思ってるから。
歌うときも話すときも、俺はいつも理沙子を思ってる。」
甘く濡れた視線に捕まれば。
胸が、音を立てて絞まる。
世界中の、離れ離れになる恋人たち全てが、こんな約束を交わして離れられたなら。
もう、これは。
甘くまとわりつく、言葉の鎖。