獲物を射抜く鋭い目線に
私の知る甘さや優しさは微塵も残されていない。
「理沙は、本当に可愛いな。」
鼓膜から脳を震わすその声は、甘美な麻酔のよう。
『かわいく・・・なんて、ない・・・。』
息が、上がる。
私に残された酸素は。
この部屋にはもう、ほとんどない。
「航といるときも、こうなの?」
綺麗な顔。
初めて正面から見据える彼の顔は。
なんて鋭利で、なんて獰猛で。
なんて艶やかで、熱っぽい。
男っぽい線の中に、長い睫毛が影を落とす。
それは所作を超えた、圧倒的な色気。
『こう・・・こうだい?』
こんな距離に、閉じてしまいたくなる目を。
必死にこじ開ける。
「そうだよ。航といるときの理沙子と、今俺といる理沙子は、一緒?」
意味が、分からない。
だけど、今日一つだけ理解したことは。
『私、今日おかしかった。普段こんなキャラじゃないのに。
陽斗くんに会うと、話してると、おかしくなる。自分じゃないみたい。こんな自分、知らないの。』
細くなる瞳に
一瞬、紅い光が散った気がした。
吸い込まれる。
彼の呼吸に。
「もっと
見せてあげるよ。」
カーテンから覗く、夜の隙間に映るのは。
追い詰めた獲物に覆い被さる、美しき獣の背中。
その下から見える四肢は
逃げ場を失くした、愚かな獲物。
噛み付くようなキスが
喉元に降る。
四肢は
私は
動かなくなる。