要くんが、戻って来ない。
どうしよう、トイレ行きたくなってきたかも・・・。汗
携帯を鳴らそうか一瞬悩んで。
どうせ見れない状況だろうと、止めた。
“絶対ここにいて”
頭の中でリフレインする甘い警告に。
『ちょっとトイレ行くだけなんで・・・。』と、独り言で断ってからソファを立った。
扉に近づくと、気づいた黒服がサッと開けてくれる。
一瞬で体が、爆音に包まれる。
『お手洗い行きたいんですけどー!』
耳を寄せて私の言葉を拾った後、頷いて左の通路を指した。
チラッとフロア内を見ても、要くんの姿はなくて。
どこかで飲んでるのかな、と思いながら。
段差を降りようとした___________
_________________その時。
「あー、いたいた!」
肩を叩かれて振り向くと、さっきの苦手系男子が。
相変わらず笑わない瞳で、私を覗き込む。
「一緒飲もうよー!」
体を寄せて叫ばれた瞬間、タバコの匂いがして腰がひける。
やっぱ、この人無理。
“お帰りください♡”で仕事柄使う鉄壁のスマイルを繰り出して。
無言で通り過ぎようとしたら、さり気なく行く手を塞がれる。
「陽斗、いま俺たちと飲んでるんだよ。来ない?」
あれ?そうなの?
「陽斗のこと、待ってるんでしょ?多分まだ時間かかるから、連れてくよ。
つーか、一緒にそこで飲もうよ。」
『そう・・・ですか?』
けどな。仕事の席でしょ?
『私、行ってもいい場所ですか?』
「ぜんぜーん!内輪だからー!」
あ、けどトイレ行きたいんだけど。
だけど、なんかこの人にトイレに行きたいって言うの。
かなり、危険な気がする。
その席に合流してから、要くんに連れて行ってもらおう。
視線を合わせると、笑ってない瞳が消えるほど。目を細めてニッと笑顔を作った。
『じゃあ。』頷くと。
「だよね~!」軽い声をあげて、私の肩を抱く。
タバコと混じる、安っぽい香水の匂い。酔いそう。
ていうか、なに?この手。近いんだけど。
出来るだけ離れようと、左側に顔を避けて歩き出そうとした瞬間。
後ろから左腕を、
強く引かれた。